冷淡上司と有能若頭は、過度に私を愛おしむ (短)
アルファとイケオジ





普通の世界では、性別は男と女。
だけど、このオメガバースの世界では、もう一つの性の分け方がある。

優秀なアルファ、一般人のベータ、差別や偏見を持たれやすいオメガ。

なぜオメガが冷遇されているか――それは「発情期」なるものがあり、その期間中はフェロモンがだだ漏れになり、そこら中のアルファを誘うからだ。

「発情期」を持つオメガは嫌われる。
だけどオメガだって「発情期」は嫌いだ。

好きでもないアルファを誘い「そういう行為」に至ってしまうのだから。オメガは生まれながらにして、悲しい本能に抗えない、悲しい性なのだ――


なんて悠長に説明している私こと――比崎 愛希(ひざき あき)はオメガだ。発情期は、だいたい月に一回やってくる。その発情期を、この三十年間に渡り、耐え忍んできた。


「発情期を押さえる薬……よし、持った」


オメガの発情期は避けられない。だけど、コントロールする事は出来る。オメガ専用の薬をきちんと飲めば、社会で働くことは可能なのだ。

そういう私も、大手企業で働いている。もちろん、履歴書は詐称。オメガなんて記入した日には、即落とされる。

私がオメガだと知っているのは、私だけでいい。



「おい比崎、この資料をまとめといてくれ」
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