あのメガネアイドルは…。
自分が自分らしく

火花

○数日後。


チャイムの音も合図のひとつ。


1人の女子が黒板から真白へと目線を移した。


それに気づきながらも真白は蝶のようにいろんなものを華麗に避けて、教室を出た。

視線だとか、呼び止めようと口を開き声になる前の男子だとか。


そして、また1つ上の階へ。

階段を一つ飛ばしで上る。


4階に着いて、階段の踊り場から一番近い窓でも廊下の端でもどこでもいい。

ガラス越しに既に見えるあの交差点。

窓を開けて風を浴びて髪が靡く。

音が直接この耳に届く。

小さく微笑む真白。


しばらく、その景色に夢中になる。

側から見れば“夢中“なんて思わないような彼女の姿や表情。


青空に目をやれば、心は浄化してゆき大きな世界と小さな自分。
これに安心感をもらう真白。



もうすぐ、教室に戻らないと。という現実が襲いかかって、無表情だった真白の表情に影が見える。


そんなときだった。

空から火花が落ちて来た。


星のかけらや雷の破片なんかではない。

青い空から確かに火の粉が落ちて来たのだ。


真白は窓から少し体を乗り出して上を見上げる。

雲が少しずつ姿を変えて流れていく。

いつもと変わらない空があった。



どこかのSF映画みたいなこと。なんてフィクションな思考で辞めておこう。

さっきの火花のことを考えるのは。


そう思っているのは確かなのに。
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