愛しのあの方と死に別れて千年<1>
第6章 ルイスの告白

1.目覚め


 ――あぁ、もう朝なのかしら……。なんだか、眩しいわ……。

 ゆっくりと目を開けた私は、部屋に差し込む光の眩しさに目を細めた。
 目に映る天井は――ただひたすらに、白い。

 ――うちの天井って、こんなに白かったかしら……。

 私は違和感の正体を確かめようと身体を起こす。するとそこはどういうわけか、全く見覚えのない部屋で……。

 ――エリオット……?

 隣にいるはずの彼の姿はどこにもない。いや、そもそもここは私の部屋ですらないではないか。
 そう思ってようやく私は理解する。今のは……ただの夢だったのだ。

 悟った瞬間、突然頭に痛みが走った。ズキズキと、なにかに締め付けられているような鈍い痛み。その痛みに、私は思い出す。

 ――そうだ、私は川に落ちて……それから……。

 痛むこめかみを押さえ、ここがどこであるか確かめようと、部屋をぐるりと見回した。

 まず――私が今寝ているベッド。これは貴族が使うようなものではなく、作りは至ってシンプルなもの。敷かれているマットやシーツにも、柄や刺繡は入っていない。
 部屋も同様に庶民的だ。広さと清潔感は十分確保されているが、家具といえば丸テーブルと椅子が二脚、そしてこれまたシンプルなドレッサーと、小さな棚が一つあるだけ。

 ――ここ……いったいどこなの?

 私はベッドから降り、外の様子をうかがおうと窓に近づく。と同時に、ガラスに映った自身の姿に絶句した。
 なぜならそれは、今しがた自分が見ていた夢の中の自分と、瓜二つだったから。
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