愛しのあの方と死に別れて千年<1>

3. お茶会

「ようこそいらっしゃいました」
「いえ、こちらこそお招きいただき大変嬉しく思います。まさかアメリア嬢直々に誘っていただけるとは思っておりませんでした」
「あら、ご迷惑でしたかしら」
「まさか! 滅相もございません」

 今日はファルマス伯爵をお招きしてのお茶会当日。雲一つない晴天。絶好のお茶会日和だ。
 私のドレスは薄紅色、髪はハーフアップにした。できるだけシンプルに、無駄に着飾ったりはしない。

 ウィンチェスター侯爵の紋の入った(きら)びやかな馬車から降り立つ彼を、私は無表情のまま(うやうや)しく出迎えた。何の偶然かファルマス伯のスーツは臙脂(えんじ)色。まるで示し合わせたようになってしまったが……まぁそれは仕方ない。ともかく、この日のためにハンナと入念に準備してきたのだ。失敗は許されない。

 私は彼を中庭へ案内した。彼の家の庭には遠く及ばないであろうが、それでもそれなりに美しい庭園だ。この時期は特に薔薇が鮮やかに咲き誇っている。

 私はハンナにお茶の用意をするよう指示し、ファルマス伯と共に椅子に腰かけた。

 そういえばファルマス伯は、すれ違う我が屋敷の執事やメイドにも人当たりの良い対応をしていた。そういうところは変わらない。たとえ千年経とうとも……。

 彼の横顔を見ていると、ふと懐かしさがこみ上げる。愛しいあの人と同じ顔で、あの人と同じように笑うファルマス伯……。千年前のあの日、私の目の前で死んだ彼――。
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