忘れられた恋の物語
「違う。そうじゃなくて…。」


次の言葉をためらう斗亜に私は何が言いたいのかわかった。


「明日はもう会えないよね?だからこれでお別れでしょ?」

「…うん。」


切なそうに顔を歪める斗亜が私の両手を取った。


「斗亜。本当にありがとう。それに本当に好きだよ。きっとこの1か月が忘れられないと思う。だから……。」


その瞬間、斗亜に手を強く引かれ気付いたら斗亜の腕の中だった。


「だから…斗亜も…忘れないで。」

「うん。わかったよ。」


今までで一番強く抱きしめられて私も思い切り抱きしめ返した。

離れたくない。もう少しだけでもいいからこのままでいられたらいいのに。せめてあと1分でも。


「…柚茉。帰らないでここにいてくれない?」

「…えっ。」


驚いて見上げると、こちらを向いた斗亜と目が合った。

その表情を見る限り本気で言っているようだった。

< 122 / 156 >

この作品をシェア

pagetop