忘れられた恋の物語
「…飛田さんのお墓はどこにあるんですか?」

「え?私のお墓ですか?」


拍子抜けしたように聞き返される。

当然だ。急に話題を変えたのだから。


「遠くはありませんけど…。隣町です。」

「それなら明日、そこに行きたいです。」

「逢田さんには会わないんですか?私のことなんて気にせずに自分のために時間を使ってください。」


そう言う飛田さんに俺は首を振った。


「柚茉にも会います。飛田さんの話を聞いて勇気が出ました。やっぱり会いたいですから。でもこんなに俺を気にかけてくれる飛田さんにも何かしたいんです。これが恩返しになるかはわかりませんけど、挨拶に行かせてください。」

「…ありがとうございます。私の墓にいらっしゃる利用者の方は初めてです。」


そう言って飛田さんは笑っていた。

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