私のこと愛しすぎだよ、結多くん。




「あっ、結多くん。そこの池に鯉がいるよ」


「お、金色だよこのみちゃん。あいつボスかな」


「どうだろう?かわいいね」


「うんすげえ可愛い。俺の目の前には鯉さんを見てる天使さんがいるよ」



スタンプ設置場所は計10箇所。

どこにあるのかはもちろん秘密とされていて、これもまたぜんぶ集めることができた班には景品を用意されているらしい。


が、さすがにもう我らは高校生。


他の班とすれ違ったときも、皆してスタンプラリーを忘れたかのごとくな、はしゃぎ具合で。



「……ごめん、このみちゃん」



しゃがんで池を覗いていると、隣に同じようにした彼が小さく口を開いた。



「気ぃつかわせちゃってる俺」



いつもと違う声質に、太陽にちょっとだけ雲がかかっちゃったんだと。


でも、そんなときもあるよね。
そんな日もある。

太陽だって休憩したい日はあるし、それでいい。


だって結多くん、私のために怒ってくれたんだと思うから。



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