ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
男たちのオセロゲーム/その2
剣崎


3人が去った後、俺は矢島さんと二人で次の段取りを確認しあった

「宗め…、どうやら叔父貴の訓読を丸呑みのようだな。今日の殊勝な態度ってよう、要は俺への戦線布告にすり替えちまったってことだろうーが?剣崎…、そうとなったら、グズグズはできねえぞ!」

「わかっています。おそらく、あのあと建田さんと北原は叔父貴に”今後”の方針を相談してるでしょう。その中身は今晩、俺が叔父貴から…」

「ああ、頼むぞ。で、どうだ…?アクションは即って思ってるのか?」

「ええ、ここは我々の思惑通り、遅滞なく火を点けちまうのが得策でしょう。叔父貴には今日の内に、こっちの意向は察してもらうつもりです」

「うむ。なにしろ明石田の叔父貴がだ、向こうに取り込まれちまってからじゃ手遅れになるからな。今日の俺と建田が和解したことを受けて、東西の両大手も何らかの動きを起こすだろうしな。その状況次第で、俺たちの絵図に不都合が生じることが何より怖い。大丈夫だな、剣崎!」

「はい。今晩、叔父貴からのシグナルは読み違いません。俺の想定違いがなければ、二代目の件はこちらの計画通りを発信しますが、いいでんですね?」

「お前があの人と今日再度会って、勝算ありと見込めりゃ、それでやれ。あとは前に進むだけだしよう」

「わかりました。…”これ”で走り出すなら、来週中にも幹部総会で決めてしまいましょう。今回の計画を完遂するには、東西に具体的な動きが出る前に、こっちは矢継ぎ早にどんどん突き進むことが肝要です」

「おお、大手の連中には考える時間を与えない…。これが一番重要ってことだな」

「そのためにはイニシアチブをこっちがとり続けることは必須ですので、そうなると、明石田さんの”相乗り”は絶対に欠かせません。今回は大筋を事前に了解してもらったうえで、その後はまず我々が行動を起こし、半ば事後承諾で強硬突破も臆せずって方針で行くしかないと思います」

「ふう…。まあ、賭けにはなるが、もう腹は括ってる。何と言ってもお前が頼りだ。とはいえだ…、正直、三本目の矢は心配だぞ。ほんとにアテにできるのか、あの娘の組み立てはよう」

ここで矢島さんの顔つきは妙に険しくなったわ

まあ無理はない

何と言ったって、16のション便娘が描いた絵だもんな(苦笑)

・・・

「麻衣のことは、生前の会長と初めてん時から全部を見てきています。ヤツは任せてください。おそらくヤツのシナリオは2週間後に実行します。もう一人のション便娘が惚れた恋人を嵌める訳ですが、これは完全に犯罪になりますので倉橋に当たらせます」

「確か、その恋人だかってのは建田の小屋でバンドやってるシロートさんだろう?ううむ…、大丈夫かよ、ほんとによう…」

矢島さん、さらに不安が増してきたようだ

ここは、あまり細かくしゃべると逆効果か…

「親分…、その男が麻衣の描く今回のオペレーションでは、メインキャストになるんです。この場には俺も付きっ切りで対応して、その男に麻衣の提示する条件を飲ませる確約はこの俺がしっかりとります。それは、建田さんに最終的な印籠を渡す役どころをそいつに担わせるってことなんです。相馬さんがおそらくは故意で遺した、あの怪しい違法薬物にケリをつけられる、麻衣の考えたサプライズなアイデアなんですよ。しかもヤツは、このシナリオをですよ、相和会の跡目では敵となる建田さんを葬る目的を重ね合わて組み立てしたんです。何とも大胆なオペレーションだが、俺は目からうろこが落ちましたよ」

「…」

矢島さんはまだ本郷麻衣を詳しく知らない

今の段階では、そこがある意味、付け目だ

俺にはこの時、矢島さんが麻衣の計画自体にも”乗っかる”決意を得たと自負できた

フン…、絶対やってやるぜ!

もはや俺は麻衣を本質まで見届けてるんだ

ヤツも俺のことは十分理解してる

心の中も、俺の今の立場も…

なら、相馬会長が見初めたイカレ娘とのイカレたこの共同戦線…、何としてもやり遂げてやる

ケイコのことを考えると胸が痛むが…




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