ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
男たちのオセロゲーム/その3
剣崎

その夜…、俺は事前に聞いていた叔父貴の宿泊先であるビジネスホテルを訪れた

叔父貴はすでに甚兵衛姿でリラックスしていたが、極めて機嫌が良かったのは一見してわかった

「…叔父貴、お疲れのところ遅くにすいません」

「いや、そっちも今日はご苦労だった。あの二人が何しろ握手したんだ、これから先のことを考えればよう、とにかく安堵したわ。ハハハ…」

「それで、今後の件なんですが…。建田さんと北原はそのあとどうでしたか?」

ここで明石田さんは、俺に顔を向けてニヤリとしたよ

「あの宗のことだからな、もうはしゃいでるわ(苦笑)。矢島とああできたとあっちゃあなあ…。早速、今日を受けた勢いで頼んますってことだ。でよう、そっちはどうなんだ?」

明石田の叔父貴は間髪入れず、返す刀だったよ(苦笑)

「”今日の次第”なら業界には矢島さんが折れたと映るでしょうし、建田さんがそういう意向なら、何が何でもってところまではやめとこうと…。実際に相和会の稼ぎ頭は文句なくあの人ですし」

「…」

叔父貴はじっと正面の俺を見つめながら、こっちの胸の内を読心しているようだった

ならば、ここは発信を誤ってはならん

・・・

「…相馬会長の逝去は西も東も待ちかねていたんですし、新体制の空白は猶予なりません。矢島さんか建田さんのどちらが次であっても、組内でしこりなく後継体制を早急にこしらえないと、広域組織から茶々がはいります。これを何としても避けることが肝要ですよ、叔父貴」

「うむ…。なら、跡目は建田と争うことを棄権するってことでいいんだな、矢島もお前もよう…」

「あくまで組織の亀裂を招くことなく、相和会が一丸となって新体制を支える空気が前提です。どうですか?」

「それは大丈夫だろう。そっちがそういった大人の対応に出れば、俺がうまく誘導するしな。…他はねえのか?この際、建田へ二代目を譲る条件は全部吐き出してくれや」

こういった念押しはこの人には珍しい

ここも読み違えてはならない

「条件というか、言うまでもなく、相馬会長がいなくなっても相和会は関東・関西いずれの傘下にも呑み込まれない…。この方針は必須です。もし、新体制がここをなし崩しにする所業に至れば即、退陣してもらう。というか、そんな状況を作ったトップはその座から引きずりおろします。力づくで…。これは譲れませんが、相馬さんの意志を守ることですから、何も改めて誓わせるほどのことではないと思います」

「ああ、それは当然だろ。いくら銭ゲバの建田とてそんなコト、敢えて念を押すまでもねえ。もしもの場合はそれでいい」

よし!

これで明石田さんから”了解”の言質を取ったぞ…

俺は心のなかでガッツポーズをとっていたよ

・・・

「じゃあ、週末に幹部総会を開く。そこで決定だ。業界にはその流れで手をまわしておく。いいな?」

「はい。叔父貴…、ひとつよろしくお願いいたします」

叔父貴は大きくうなずいていた

5日後…、相和会幹部総会の場で、建田さんの相和会二代目就任が正式に承認されることとなる…




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