あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
じっと見つめていると、母親が彼に魔法を使っていることに気づいた。
母親が顔を上げると、右手の人さし指を唇の前で立てている。
子供の小さな身体では馬車での長時間移動は負担になる。だから母親は魔法を使って眠らせている。彼女が息子を撫でる手は、優しかった――。
目をしっかりと閉じていたはずなのに、移動中のやりとりを思い出していたウリヤナは、すっかり目が冴えてしまった。
ため息をついて寝返りを打つ。硬い寝台、薄い寝具。屋敷や神殿と暮らしていた時とは違う環境。だが、これからはそれに慣れなければならない。
重くならない瞼を無理矢理閉じて、なんとか夢の世界へ向かおうとしたとき、大きな音が聞こえてきた。
 ――ドォオオンッ!!
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