あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
コリーンは可能性があるならば、魔術師の道を目指したかった。だが、それをこの父親が許すわけがない。聖女であるならば、まだしも――。
そう思いながら大広間へと向かい、ダンスの輪に混ざる。父親と踊るダンスは可もなく不可もなく。ただ、父親は面白くなさそうに唇を真っすぐに閉ざしていただけだ。
ウリヤナが神殿に入ると聞いたのは、それから十日後だった。
意味がわからずカール子爵家を訪れると、ウリヤナは先日の魔力鑑定で聖なる力が認められたとのことだった。
『聖女? ウリヤナが? すごいじゃない。私も友達として鼻が高いわ』
コリーンがそう口にすれば、ウリヤナも悲しそうに微笑んだ。
『私が聖女だなんて信じられない』
信じられないのであれば、その力を分けてほしい。
優しそうな家族もいて、他の誰にもない能力を持ち合わせて。
なぜそれが自分ではないのだろう。同じような人間だと思っていたのに、なぜ彼女が選ばれたのか。
そんな思いがコリーンの中に沸き起こる。それでも、その気持ちに気づかない振りをしてウリヤナを見つめた。
『きっと、ウリヤナだから力に選ばれたのよ。神殿に入るの? 気軽に会えなくなるのは寂しいけれども。だけど、ウリヤナならできるわ』
ウリヤナ・カールという人間はいなくなるのだ。これから彼女は聖女様となる。
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