あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
それでも騙されたとは思っていない。彼を信じてここまでついてきたのはウリヤナ自身が決めたことである。
レナートがウリヤナを連れて屋敷へと入った時には、使用人一同が温かく迎え入れてくれた。そして、ウリヤナの妊娠を知るや否や、壊れ物でも扱うかのように丁寧に接してくれる。
彼の子ではないのに。その気持ちがウリヤナを素直にさせなかった。
それから毎日、レナートはウリヤナの腹部に触れ魔力を注ぎ始めた。
最初はくすぐったいとさえ感じていたその行為だが、何度も繰り返していくうちに慣れるし魔力を注がれている間にも幾言か言葉を交わすようになる。
お互いにとって計算的な結婚であったが、レナートはウリヤナの凍り付いた心を次第に溶かしていったのだ。
不器用ながらもウリヤナを気遣うような些細な仕草。笑うと糸のように細くなる目。照れると赤くなる耳の下。
そして何よりも、ウリヤナを聖女としてではなくウリヤナという一人の女性として扱ってくれる。聖なる力を失ったからと言って放り出すようなこともしない。
「おっ。今、俺の手を蹴った」
「わかったの?」
「あぁ。元気に動いている」
お腹に向かって語り掛ける彼の表情は柔らかい。目元も緩んで目尻に皺を作り、顔も綻んでいる。誕生を今か今かと心待ちにしてくれているのがウリヤナにも伝わってくる。
レナートがウリヤナを連れて屋敷へと入った時には、使用人一同が温かく迎え入れてくれた。そして、ウリヤナの妊娠を知るや否や、壊れ物でも扱うかのように丁寧に接してくれる。
彼の子ではないのに。その気持ちがウリヤナを素直にさせなかった。
それから毎日、レナートはウリヤナの腹部に触れ魔力を注ぎ始めた。
最初はくすぐったいとさえ感じていたその行為だが、何度も繰り返していくうちに慣れるし魔力を注がれている間にも幾言か言葉を交わすようになる。
お互いにとって計算的な結婚であったが、レナートはウリヤナの凍り付いた心を次第に溶かしていったのだ。
不器用ながらもウリヤナを気遣うような些細な仕草。笑うと糸のように細くなる目。照れると赤くなる耳の下。
そして何よりも、ウリヤナを聖女としてではなくウリヤナという一人の女性として扱ってくれる。聖なる力を失ったからと言って放り出すようなこともしない。
「おっ。今、俺の手を蹴った」
「わかったの?」
「あぁ。元気に動いている」
お腹に向かって語り掛ける彼の表情は柔らかい。目元も緩んで目尻に皺を作り、顔も綻んでいる。誕生を今か今かと心待ちにしてくれているのがウリヤナにも伝わってくる。