あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
彼は学生のときに質の悪い友人に騙された。むしろ洗脳されていたといってもいいだろう。
実際、彼はそういった魔法に魅入られていたのだ。それに気づいていたが、ウリヤナや両親の力ではどうにもできなかった。
そもそもイングラム国には魔術師が少ない。
「お前の弟だからな」
息子を抱いたまま、彼はウリヤナの隣に座る。
「お前の話を聞いておかしいと思った。いくらなんでも学生が家の金に手をつけるのは、変だろう?」
イーモンが屋敷の金庫から勝手に金を持ち出していた。それがきっかけとなり、カール子爵家は一気に傾いた。
だが、ウリヤナが聖女となり褒賞金でなんとか立て直したのだ。
その話を聞いたレナートは人を使ってこの件を調べていた。
その結果――。
やはりクロヴィスが黒幕だった。彼の幼馴染みであり人望のあるアルフィーの名を使ってイーモンと接触した。
屋敷の金を盗ませカール子爵家を窮地に立たせる。
そこへ王家が援助の手を差し伸べ、その代わりウリヤナを手に入れる。それがクロヴィスの描いていたシナリオである。
クロヴィスはウリヤナが聖女となる前から、彼女に想いを寄せていたようだ。
だが、彼のその気持ちは「愛」とは呼ばない。
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