卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
【再会は深愛の始まり】
今日は教室の日で、顔なじみの生徒が集まってきた。
「奈菜先生、ここ教えてよ」
「あぁ、ここね。まず自分で解いてみた?」
「うん、途中までは分かったんだけど・・・」
「ここはね・・・」
教室に来る子達は皆、私の事を「奈菜先生」と呼ぶ。
教師の時は、距離を取って教えていたけど、ここでは寄り添えて教えられるから楽しい。
「どぉ?」
「うん、やっと学校の先生が言ってた意味が分かったよ。さすが奈菜先生」
「でしょ?」
男子生徒の笑顔を見て、嬉しくなった。
「僕、ここに来て先生に教えて貰えるの、楽しみなんだ」
「ほんと?私も嬉しい」
数学で、難しい問題の答えが導けた楽しさを、分かってもらえると教えた甲斐がある。
それを、また実感出来ているのが、凄く嬉しかった。

18時になると、皆が帰り、教室を片付けて、勉強机にしていたテーブルを動かしてメイキングし、その部屋は喫茶店へと戻る。
カウンターに行くと、北見くんが座っていた。
「北見くん、来てたんだ」
「奈菜先生、ちょっと」
美和に会いに来てた北見くんが、声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「奈菜先生。気をつけろよ。あの年頃の男子は、大人の女性に魅力を感じる子もいるんだ。距離をおけよ」
「大丈夫よ。あの子達は」
「わかってないな。高校生でも男だからな」
「もう、心配性は昔と変ってないんだから。忠告ありがと」
私は、北見くんの言葉を気に留めることもなく、接客の仕事に集中した。
でも、その時の北見くんの言葉の意味を、私はあとで知ることになる。

それから数日が経ち、教室が終わったあと、いつもの様に、少しだけ外の風を受けに行く。
空を見上げて、深呼吸して、気持ちを切り替えた。
日が落ちるのが早くなったなぁ。
この季節、どこか寂しさを感じた。
「奈菜先生」
1人の男子が声を掛けてきた。
「あれっ、まだ居たの。早く帰りなさいよ」
駐車場の奥側に居たその子は、俯き加減になった。
「大丈夫?気分でも悪いの」
私が傍に寄って、覗き込むと、
「あのぉ・・・実は・・・」
少しずつ、私との距離が近づく。
何だか様子がおかしい。
「ど、どうしたの?」
「奈菜先生。僕、先生のことが好きです」
そう言って、私の腕を掴んだ。
「い、痛いから離して。ね、ちゃんと話しよ?」
腕を掴まれたまま、壁に抑え込まれそうになる。
ど、どうしよう・・・
大きな声を出せば、この子が変な目で見られる。
だからといって、突き飛ばして怪我でもしたら大変だし・・・
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