卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
部屋に入ると、落ち着いた色合いの家具で、シックな雰囲気は、とても落ち着く。
「お酒でも飲む?」
「あっ、でも明日仕事だし」
「山坂さんに許可貰ったよ。俺のために先生、休みにしてって」
「えっ?」
「まぁ、今飲んだらやけ酒になりそうだし、コーヒーにしようか。先生、今酔うと絡んできそうだから」
「そんなことしません!」
北見くんと話をしてると、心が和む。
北見くんは、マグカップを2つ持って、私の横に腰掛けた。
「美味しい・・・」
「先生が持つと、カップが大きく見えるわ」
「もー、私は北見くんに比べれば小さいだけよ」
いつものように2人で笑い話をしながら、しばらくコーヒーを飲んでいた。
「良かった。いつもの先生に戻って」
「ごめん、気を使わせちゃったね」
「先生、元彼のこと、まだ好きなの?」
「ううん、もう愛情とかは無いの」
「でも、やっぱり結婚まで考えた人だから、色々考えるんだ」
「もう、顔も見たくない。でも、思い出しちゃうの」
「それって、愛し合った体がまだ覚えてるの?」
北見くんが、怒りが垣間見れる熱い瞳で私を見つめる。
「それは・・・」
「そうだよね。本能的に体は覚えてるんだ」
北見くんが近づいて来て、ソファの背もたれに追い込まれる。
「嫉妬でどうにかなりそうだよ」
目を細めて、怒りで揺れる瞳でじっと見つめられた。
そうじゃないの。でも・・・
私は首を横に振った。
「でも、過去は取り消せないもん」
私は取り消せない過去に、涙で目が潤んできた。
愛されていたんじゃない。
ただ、体だけを求められていただけなんだ。
「本当に忘れたいくらい、彼には未練が無いんだね、先生」
「うん・・・」
「じゃあ、俺が忘れさせてやるよ」
北見くんの体温を感じ取れるくらい、体が近づく。
「ちょ、ちょっと待って、北見くん」
「もう待たない」
そして、私の頬に大きな手を添えると、指で撫でて、優しく微笑む。
「俺、先生のこと、忘れたこと無かったよ」
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