卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
【再会はトラブルの予感】
教室を続けるか続けないかの答えが出せず、時間だけが過ぎていく。
「奈菜、気持ちは決まった?」
「美和、ごめんね、決めきれなくて」
「いいよ、慌てなくて。奈菜がしんどくなければ」
止めようと気持ちは定まっているものの、子供達の事を考えると、なかなか決断出来ない。
その時、ドアベルが鳴った。
「こんにちは」
「北見くん、いらっしゃい」
耀がお店に来て、カウンターに座った。
「奈菜、いつものお願い」
「うん、待っててね」
私はブレンドコーヒーを耀に出した。
「ありがとう」
耀がカップに口を付けようとした時、ドアベルが鳴った。
耀が入り口を見て、
「高山さん・・・」
そう言うとカップを置き、その人に近づいて行った。
「高山さん、北見です。こんにちは」
「あぁ、これは北見さん。その節は大変お世話になりました」
「あの、せっかくですから、私の隣にどうですか?」
「いいんですか。では、お言葉に甘えて」
2人はカウンターに腰掛けた。
高山さんは、とても落ち着いた感じの男性で、年齢は60歳くらいかな。
「北見さんのご自宅はこのお近くですか?」
「いえ、私はここに仕事という名目で、休憩に来てます。私の彼女がここでお世話になってまして」
耀は私を見て、高山さんに紹介した。
「これはとても可愛いお方で。高山といいます。北見さんと北見さんのお姉さんには、会社の経営立直しにご協力いただきまして」
「初めまして。私、新庄といいます。宜しくお願いします」
私は頭を下げて、挨拶をした。
「高山さんは、ここのお近くのお住まいなんですか」
「いえ、違うんですが、もうすぐ隣の家に引っ越しして来ます。それでご挨拶にと」
その言葉を聞いて、美和も耀も私も、一瞬固まった。
「隣?」
皆で一斉に声が揃う。
駐車場側と反対に立っている一軒家は、昔からある建物で、庭が広い2階建ての大きな家だった。
高山さんはちょっとびっくりしたような顔をして、
「は、はい。隣の一軒家は、両親が住んでいましたが、他界しまして、長男の私が受け継ぐことになりまして」
「失礼しました。最近、お見かけしないとは思っていたのですが・・・以前、お顔を見た時にご挨拶したくらいで、何も知らずに」
美和が頭を下げていた。
「いえ、そんな。年老いた父が住んでいましたが、病を患って、殆ど入院していましたから」
高山さんも申し訳なさそうに、頭を下げていた。
「高山さん、会社はその後、順調のようですが、いかがですか?」
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