妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

05.案内

「寝室の隣はシルディアのドレスルーム。君に似合いそうなドレスを仕立てておいた。好きにするといい」
(いつ採寸されたんだろ……?)

「寝室からすぐ行けるのは書庫だよ。シルディアが退屈しないように古今東西問わず本を集めたんだ」
(わたし、読書が趣味だって言ったっけ……?)

「書庫の隣は俺の執務室。書庫とリビングルームから来ることが可能だ。でも、ここは色んな者が出入りするから、来たい時は必ずノックしてね。執務室の奥にも書庫はあるけど、資料ばかりだから面白くないかも」
(執務室を通らないと廊下には出れないようになっているのね)

 流れるように部屋を案内したオデルは、執務室の端で満足そうにしている。
 一方のシルディアは、部屋の間取りに頭を悩ませていた。
 落ち着いた雰囲気の執務室だが、シルディアの内心は穏やかではない。

(どう転んでもわたしを外に出す気がないのね。オデルが公務をしている間は城内を動けると思っていたけれど、この間取りじゃ無理だわ)
「どうかな? シルディアが来るまでに造らせたんだ。気に入ってくれると嬉しいな」

 寝室から書庫、書庫から執務室。執務室からリビングルーム、リビングルームから寝室と全て繋がっている。
 それは、シルディアが外に出さないために造られたのだと悟るには十分すぎた。

「扉の外には見張りがちゃんといるのよね?」
「そうだね。俺はいらないと言っているんだが、騎士団長がうるさくて仕方なく」

 そう言ったオデルは肩をすくめた。
 彼の不本意だと言わんばかりの行動にシルディアは苦笑する。

「それにしても、他国の王族を執務室に連れ入るのはどうかと思うわ」
「大丈夫。半年後には結婚するんだ。問題ないよ」

 皇族と王族との結婚は、結婚しましょうとすぐに婚姻が結ばれるわけではない。
 準備期間が必要になるのが一般的だ。
 半年から一年かけて、貴い身分にふさわしい式になるよう準備をする必要があった。
 すべては、皇族の力を見せつけるためだ。
 しかし、皇国で一番重要視されるものは、準備期間といった一般的なものではないことを、シルディアは知っている。

「本当にそう思っているの?」
「アルムヘイヤは君を差し出したんだ。結婚しないという選択肢はないと思うけどね」
「……わたしはオデルの【つがい】ではないわ」
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