シリウスをさがして…

ナイアガラの滝のよう…。

ずっと話せなかった時間が長かったせいか、紬の話が止まらなかった。



次から次へと引き出しが出てくる。



ある程度話をしてスッキリした頃、ため息をついて話さなきゃいけないことを思い出した。


「実は文化祭の時、輝久に告白されてて、返事をまだしてなくて……今まで、ずっと気づかなくてどうしたらいいか分からなかった。幼馴染ってこともあるし、これまでの関係性が終わるかもしれないと思うと…。」


「天然なのかな? 紬じゃないけど俺でも気づいてたよ。何故にわからない?」


「だって、輝久が他校の友達を彼女として紹介してって言うんだよ。私なんて眼中にないって思うじゃない。」


「…そんなのあいつのことだ、カマかけてるに決まってるっしょ。ちょっと待って、その話、電話にしよう。紬のお父さんが外で待ち構えているから。そりゃ,心配するよね、もう10時になってるし!」


紬の家の駐車場にとめてずっと話をしていた2人は時間が過ぎてることに気づかなかった。


帰ってきたことに気づいた父の遼平は外に出て一服しながらまだ来ないかなと様子を伺っていた。


「あ。ほんとだ。あとで、ラインするね。今日はありがとう。」


紬は慌てた様子で車から降りた。


運転席から遼平に向かってペコリとお辞儀した。


「お父さん、遅くなってごめんなさい。今帰りました。」


「ん? 別にいいんだよ。ただ、一服してただけだから。まあ、おかえり。」



 想像以上に元気になってることに安堵した。

 心中は早く帰ってきなさいと思っていた。


 少しだけ車をバックして帰っていく陸斗を睨みつけた。



 親心子知らずだった。



ーーーー



家に帰ると、リビングが騒がしかった。
夜10時を過ぎているはずなのに。

「ただいまー。」

「陸斗、おかえり。」

「あー。王子様のご帰宅ー。」

 ソファにくつろいでいたのは宮島洸だった。騒がしい原因はコレかと思った。

「本当、さっき帰ってきたら珍しい人いると思って、びっくりしたわよ。陸斗も参加する?陸斗はお酒まだ飲めないけどね。」

 さとしと紗栄は、珍しい来訪者だと、つまみやお酒を準備して宴会が始まっていた。洸はすでに出来上がっていた。。

「あれ、悠灯は?」

「何か、明日用事あるから早く寝るって部屋にいるよ。まだ起きてはいるけど。」

「ふーん。俺はお風呂入るかな。電話する用事あるから…。」

「そう。まぁ、無理には誘わないけどね。洸も連絡なしで突然来るからさ。」

「紗栄ー、そんなこと言わないで~!」

「#紗栄おばさん__・__#でしょう!呼び捨てしないの!」

「洸は昔からだもんな。結婚するとか言うくらい紗栄のこと気に入ってたしな。」

「いつの話だよ。いいじゃん。名前で呼ぶくらい減らないもん。」

「本当、洸見てると昔の俺みたいって思ってしまうわ。」


 さとしが洸の頭をワシャワシャすると、ボソッとつぶやく。


「洸が母さん口説いたって本当?」


「5歳の頃の話だよ。お父さんといつも犬猿の仲で喧嘩してたのよね。年の差あるのに#大人気__おとなげ__#ない…。今もそれは変わらなそうね。」

 陸斗は2人に相手されている洸を見ていると子供っぽく感じた。こういう一面もあるのかと思った。




 お酒を飲みながら、盛り上がっているリビングを陸斗はすり抜けて、お風呂に入り、急いでパジャマに着替えて部屋にドライヤーを持っていった。

 髪を乾かしながら、ラインを送信する。


『今風呂上がり。電話できる?』

『もう少ししたら、髪乾く。』

 どうやら、ほぼ同じタイミングでお風呂から上がっていたらしい。

 髪を乾かしていた。

 頭を触り、乾いたことを確認すると、通話ボタンをタップした。


  着信音が鳴り響く。


『髪乾いたよ。』

「うん。んじゃ電話できるね。」

『さっきの話の続きしていい?』

「うん。どうぞ。」

『輝久のこと、陸斗にずっと言えなくて、ストレスだったと思うの。自分の中でね。でも、さっき言えたからスッキリしたんだけど、どうすればいいかわからなくなって…。』



「紬はどうしたいの?」



『好きでいてくれることは嬉しいんだけどさ。陸斗いるし、輝久のことは受け止められないし、でも、幼馴染としての関係は続けたいって思うけど、それはずるい考えなのかな。』


「輝久にとっては辛いんじゃないの?今まで何も言ってきてないけど、俺の風辺りは…圧力の話ね。結構あったけど、無言の。俺が輝久だったら、はっきりしてほしいと思うよ。あとは紬次第だよね。気持ちがあるなら、俺と別れて、輝久と付き合うのか。幼馴染の関係って俺には分からないからな…。」


『……別れないよ。なんでそういうこと言うのかなぁ。』


 少し泣きそうになる紬。鼻をすする声がする。

「いや、でも、紬の本当の気持ちはまっすぐでいて欲しいし、無理に俺にすがってほしくないから。俺は待ってるよ。もし、気持ちがそっちに寄り道して傾いたとしても戻ってきてくれるって信じてるから。大丈夫、何かあったら言って。俺はずっと紬のこと想っているから、変わらないから。」


 自信の表れなのか、愛が超えた何かなのか。想像と違う返答で驚いた。
 
 好きな人は本当に好きな人といてほしい。たとえ、それが自分じゃなくても見守っている。

『う、うん。ありがとう。輝久にはっきり返事してくるね。何だか、モヤモヤした気持ちがスーッと引いたよ。幼馴染の件もはっきり聞いてくる。本人に確かめてくるから。』


「うん。それでいいんじゃない。んで、今日はどうするの? 紬のイビキ聞いてて良いの?」

前につなぎぱなしの電話をそのままにして寝息を聞かれていた。

『それはちょっと…。またラインするから。今日は天体観測連れてってくれてありがとう。見たかった星やっと見られて本当良かった。』


「なんだ、残念。うん。ちょっとご飯のこと考えてなくてごめんね。また見に行こう。寒いけど、冬の星はもっと綺麗に
見えるから。」


『うん。楽しみにしてる。そろそろ眠くなってきたから、もう寝るね。おやすみなさい。』

「紬」

『んー?』

「大好きだから。おやすみ~。」

 陸斗はそういうと逃げるように通話終了を押した。

 恥ずかしすぎて照れていた。



 今日見る夢はきっといい夢だろう。


 2人はスマホをベッドの棚に置いて眠りについた。
< 43 / 74 >

この作品をシェア

pagetop