ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「うーん、でもさあ、キャッサバっていうサバからとれた特別な卵だって、インスタかなんかで見た気がするんだけどなあ」
「ならば魚の卵か……」

 魚の卵ではないのである。

 タピオカの件は残念な結果に終わったものの、エミが「ヤバ、イクラじゃん! おいしー!」と大喜びしたため、ディルは旅商人にたっぷり報奨金を与えた。そして、引き続きタピオカ探しを続行するよう頼むとともに、エミがトイレで席を立っている間にこっそり追加の依頼をした。

『実は婚約者が喜ぶような贈り物を探している。……俺にはどのようなものが良いのかさっぱり分からないから、聖女に贈るにふさわしいものをいくつか見繕って用意せよ。金に糸目はつけないつもりだ』

 旅商人は面食らった。それもそのはず、今までディルが頼むものと言えば、禁書や怪しげな魔術具といった変わり種のものばかりだったのだ。
 そんな彼が、婚約者のためにプレゼントを買い求めようとしているではないか! 前代未聞の出来事である。

 そんな胸の内の動揺を全く顔に出さず、旅商人は揉み手をしながら微笑みを浮かべた。
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