ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

伯爵、研究する!

 エミが媚薬を飲んだという事件はあったものの、ソーオン伯の屋敷はかつてないほどに平穏だった。
 ここのところ、国王からの長々とした手紙も届いていない。先日のドラゴン騒ぎで、つまらない手紙を書いている時間もないのだろう。
 そのおかげで、ディルは上機嫌で趣味――つまり、小難しい「未知への探求」を称した研究、実験のアレコレに打ち込むことができた。

「最近、急に寒くなってきたねえ。もう秋通り越して冬って感じ」

 ディルの実験に付き合って、裏庭で手持ちぶさたに空を見上げていたエミは、ぶるりと身体を震わせた。金髪を揺らす西風に、ここのところ刺すような冷たさが混じる。
 地面に何やら小難しい文様をチョークで書いていたディルは顔を上げて一息ついた。

「ガシュバイフェンの冬は厳しい。そのけしからんスカートを履くのを、そろそろやめたらどうだ? 足が冷えるだろう」
「え~、ギャルのファッションは気合と根性だから大丈夫なんです~!」
「まったく、風邪をひいてしまったらどうするんだ。服装なんて、機能性を真っ先に重視するべきだろう。それなのに、まったくお前ときたら、いつまでそんなけしからん短いスカートを……」
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