ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 はにかみながら腕にまとわりつくエミに、ディルは心臓のあたりを押さえた。今日も馬鹿ップルは絶好調だ。
 そんな中、エントランスに続く階段から、華奢な黒髪の女と金髪の男が降りてきた。

「エミたそ、やっと来たのね!」
「ヤバい、サクぴとロイっぺじゃん! ちょりーっす! おひさーっ☆」

 見知った顔を見つけたエミが、ブンブンと大きく手を振る。現れたのは、聖女サクラとその婚約者で第二王子でもあるロイだった。
 サクラはまっすぐエミに走り寄り、手を取った。

「久しぶりだね、エミたそ! 無事で良かった! もう大丈夫だからねっ!」
「はにゃ? もう大丈夫って?」
「話はあとにしましょ。あとでじっくり聞くから。それより、疲れたでしょ? エミたそのお部屋は、私の部屋の横なんだよ♡」
「マ!? 夜中までしゃべり放題じゃん!」
「そうなの! 美味しいお菓子と紅茶もいっぱい集めたから、一緒に食べようねっ。またマニキュアもしてほしいな~。自分じゃどうしても上手くできなくて」
「えーっ、マジで!? サクぴにマニキュアするのってなにげに久しぶりじゃない!? 何色にしちゃう?」
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