ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「当たり前だ。王子からの勧めとなれば、もはやこの婚儀は決定事項も同義。この国の貴族である以上、私に拒否権はない」

 ディルのあくまでも事務的な言葉に、セバスチャンは顔をこわばらせた。これではあまりに聖女がかわいそうだ。言外に、「お前は望んで迎えた婚約者ではない」と言っているようなものなのだから。
 案の定、エミは一瞬びっくりしたような顔をしたあと、おもむろに俯いて拳を震わせた。金色の前髪に隠されて、その表情をうかがい知ることはできない。

「主様、そのような言い方はあんまりです。聖女様があまりに哀れで……」

 さすがに、ディルの態度は無礼すぎた。エミに同情したセバスチャンは、顔をしかめ、エミの肩を持つ。しかし、ディルは小馬鹿にした笑みを浮かべて肩をすくめただけだった。

「全て事実だ。しかし、救国の聖女とはいえ、これしきで泣いているようであれば、しょせんそこら辺の女どもの同じレベルの――……」
「や……」
「や?」
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