ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

伯爵、命令する!

(あの国王はいつもこうだ! こちらの事情を無視して、自分のことしか考えない! どうせこの部屋を選んだのも、『部屋が近ければ、その分仕事が頼みやすい』とかそういう理由に決まっている!)

 ディルは腕組みをして部屋を歩き回る。与えられた部屋は広く、調度品は一流のものばかり。一般的に言えば、国王にこのような部屋を与えられること自体貴族としての誉れかもしれない。
 しかし、書斎机の上に山ほど積まれた書類がいただけない。さすがのディルもめまいを覚える量だ。
 
「これを、これから処理するのか……」

 ため息交じりに呟くディルの後ろから、重い足音がした。

「おお、ソーオン伯よ! 待ちわびておったぞ」

 ノックもなく突然部屋に入ってきたのは、サンクトハノーシュ王国の国王、サンドリッヒ三世ことサンドリッヒ・アレクサンドル・ハノーラーだった。
 でっぷりした身体つきに、肉に埋もれた落ち着きなくきょろきょろ動く小さなブルーの目。ピカピカの王冠がのっている頭は、だいぶ禿げあがっている。服装は白い立派な軍服に赤いマントなのだが、どうも服に着られている感が否めない。
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