ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 場違いに明るい声で、エミがはしゃぐ。もはや呼吸をするのも苦しいほどの熱風が吹き荒れている。
 苦悶の表情を浮かべるディルはぐしゃぐしゃと前髪を乱した。

「……聖女よ、先ほど話した計画は、すべてあくまで理論上の話だ。しかし、お前は本当に良いのだな?」

 ディルは唸るように言った。
 ここに来るまでの間、ディルは炎を消し止める方法を考えていたのだ。頭に入っているすべての知識を総動員して、ついに彼は閃いた。

「理論上、人間の多大な魔力エネルギーは、魔晶石のエネルギーを超越する。だから、お前のありったけの魔力を炎にぶつければ、残存する魔晶石のエネルギーを中和させ――」
「よくわかんないけど、魔晶石の炎にあたし炎をぶつければオッケーって話でしょ? 間違ってる?」
「……間違っていないが、お前の口から聞くと妙に不安になるのだが……。やはり再考の必要がある気がしてきた……」
「えーっとさ、ぶっちゃけそんな時間ないっしょ?」
「ぐっ……」
 
 ぐうの音も出ない正論だ。苦い顔をするディルに、エミは微笑んだ。

「大丈夫だって。ハクシャクが言うことなら全部あたしは信じるよ♡」
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