ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ぐいぐいと指輪を見せるエミから、サクラは必死で目をそらした。意地でもふたりが婚約したという事実を認めたくないらしい。

「ね、ねえ、エミたそ、本当にそれでいいの……? エリックは国外追放されたし、その取り巻きだって王宮にいられなくなるわ。つまり、エミたそのことを悪く言う奴らはいなくなったの。だから、エミたそは首都に戻っても大丈夫なんだよ? 勝手に決められた婚約者とかいう冷血漢と一緒になることなんてないのに……」

 必死で説得しようとするサクラに、エミは迷いなく「大丈夫!」と答えた。

「王宮も楽しいけど、田舎暮らしもいいもんよー? マイナスイオンぱないからねえ。それに、あたしハクシャクのこと激ラブ満タン丸だから、どんなところでもハクシャクさえいればおけまるでーす!」

 そういって、エミは嬉しそうにディルの腕の中に飛びこむ。ディルは「こら、急に抱きついてくるな」と口では言うものの、まんざらでもない顔をしている。
 ディルの腕の中のエミは、心底幸せそうだった。異世界にきてずっと一緒にいたサクラが、一度も見たことのないほどに。

「エミたそ……」
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