ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

執事、見守る!

「お帰りなさいませ!」

 大量の土産を持って帰ってきたディルとエミを、屋敷の召使いたちは大喜びで迎えた。サンクトハノーシュ王国の北限の領地であるガシュバイフェンは、まだ分厚い雪が残っている。しかし、領主とその婚約者の帰還によって、屋敷に一足早い春が来たようにパッと賑やかになった。
 屋敷中のメイドたちがエミのお土産に歓声をあげて大喜びするなか、セバスチャンはいつも通りせかせかと汗を拭きながらディルに駆けよった。

「長旅お疲れ様でございました。冬の間のガシュバイフェンは特に変わったこともなく……」
「冬の間の報告の書簡は事前に受け取った。ご苦労だったな」
「それより、そのぉ、例の計画はどうなりましたか?」

 セバスチャンは身振り手振りで、プロポーズは大丈夫だったのか訊ねる。
 ディルのプロポーズ大作戦は、セバスチャンにとって一番の心配事だった。なんせ、ずば抜けた知能を持ち合わせていながら、恋愛についてはまるでトンチンカンなあの領主がひとりでやると言いだしたのだ。ひと悶着起きないわけがない。冬の間、セバスチャンはディルのプロポーズが失敗する夢を見て何度か飛び起きていた。
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