四月のきみが笑うから。
春霞

 昔から人よりも考えすぎで。


 人よりも思い詰めやすくて。



 どうして自分はこんなにだめなんだろうって、毎日のように思っていた。



 特別じゃなくてもいいから、普通になりたい。


 誰からも好かれなくていいから、誰からも嫌われたくない。


 息苦しい。もう、消えてしまいたい。


 そう願えば願うほど、自分が惨めで仕方がなくなる。




『辛いのはみんな同じなんだから』




 そんなのわかってる。


 でも、違うの。




 気づいて、助けて。


 心の中で叫べば叫ぶほどに。




 廃れて、壊れて、崩れていく。





『瑠胡は普通じゃないよ。少なくとも俺からみたら』


『そんなつまらねえこと言うな』


『こっちこい、瑠胡。俺は瑠胡を必要としてる』




 そんなわたしを救ってくれたのは、駅のホームで出会ったあなたでした。




 あなたはいつだって明るくて優しくて、太陽のような人だった。


 あなたと一緒にいるときだけは、悩みを忘れることができた。




 ……あなたはいつも笑っていた。


 きっと抱えるものなどないのだろうと、そんな錯覚をしてしまうほどに。




『もう俺、だめだ……』


『こわいんだ……自分で決めたくせにこわいんだよ、俺』




 わたしは気付けていなかった。


 人には見えないところで、あなたが誰よりも涙を流していたこと。





 頑張らなくていいよ。


 頑張って。



 正反対のわたしたちが互いに送る正反対の言葉は、二人を支える何よりの力となる。




『笑って、特別なひと』




 わたしはあなたの
          笑顔がみたい。
  俺は きみの



< 1 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop