【受賞】コワくてモテる高杉くんはせわが好き。

第二章 初めての気持ち


 〇学校・廊下(早朝)

 女子生徒1「見て見て、高杉くんだ!」
 女子生徒2「朝からクールで超かっこいい。眼福〜! でもなんな怒ってる? 目つきめっちゃ怖い」
 女子生徒1・2「「でもそこがいい〜」」

 黄色い歓声を上げる女子生徒たちを気に留めず、廊下を颯爽と歩く理人。眉間に皺を寄せて怪訝そうな顔を浮かべているが、頭の中ではせわが喜びそうな今日の夕食の献立を考えている。主婦。

 女子生徒「高杉くんおはよ〜! 今日もコワかっこいいね!」
 理人「はよ。……コワかっこいい?」

 相変わらず、高杉くんはコワくてモテる。

 理人とファンの女子生徒たちの様子を遠目で眺めているせわと麗子と美波。

 麗子「相変わらず高杉人気すごいわー。そして今日もクール」
 美波「でもやっぱ何考えてるか分かんないよね。ね、せわ?」
 せわ「へっ、あ、うん! そうだね」

 せわ(たぶんあの顔、スーパーの特売のこと考えてる)

 険しい顔をしている理人を見ながらせわは思った。

 ※正解。



 〇学校・教室(昼休み)
 教卓に先生が立っている。

 先生「再来週は球技大会がある。各々出場種目決めとけー」
 生徒たち「「はーい」」

 せわは頬杖を着き窓の外を眺める。

 せわ(球技大会かぁ。私、球技だめなんだよなぁ)

 教室の後ろの黒板に、種目が書かれた紙が張り出されている。せわと麗子、美波はその貼り紙を見上げて思案する。

 美波「サッカーにバスケ、テニス……ドッジボールかぁ。麗子ちゃんはバスケ?」
 麗子「そのつもり。美波はテニスでしょ?」
 美波「うん」

 美波はテニス部で、麗子はバスケ部だ。こういうときに運動部は羨ましい。一方、写真部のせわは悩んでいた。

 せわ(どうしよ、この中ならドッジボールかな……?)

 うーんと黒板の前で唸っていたら、理人がやって来た。理人はサッカー部なので、サッカーを選ぶと予想した。

 男子生徒1「理人はサッカーだろ?」
 男子生徒2「高杉がいたら俺らのチーム無敵だよな!」
 女子生徒「えっ、理人サッカー出るの? 絶対応援する!」

 周りの生徒たちが、騒ぎ始める。

 理人「いや、俺は……」

 理人はみんなに気づかれないように、せわにこっそり耳打ちした。

 理人「せわはどれ出んの」
 せわ「ドッジ……かな」
 理人「了解」

 目立ちたくないせわは、理人と幼馴染ということは、クラスメイトたちには隠している。彼もそのことを理解しているので、学校の中で普段はほとんど接触してこないのだが。

 理人はみんなの元に戻り、張り紙のドッジボールの出場者枠に名前を書いた。

 女子生徒1「高杉くんドッジボール? じゃあ私もー!」
 女子生徒2「えー、サッカーじゃないんだぁ。応援したかったな〜」

 せわもペンを持って張り紙に名前を書きにいく。ギリギリ最後のひと枠に間に合った。

 せわは昔、ドッジボールでもサッカーでもバスケでも、ことごとくボールを顔面で受け止めたことを思い出した。

 せわ(理人、私が運動音痴だから心配なんだ。……優しい)

 名簿の『高杉理人』の文字を見つめながら、くすと小さく笑った。
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