新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
細く長い指、形の整った爪には薄くマニキュアが塗られていた。

「椿、震えている」

霞月は呟いて、表情を変えずに微笑むと、パッと手を離し、立ち上がり窓辺に立った。

「此処から温室がはっきり見える。監視カメラを設置すれば、誰が入って行き出て行ったか、つぶさにわかるだろう」

椿は握られていた手首をしげしげと眺めていた。

捕まれた跡もなく、目眩もふらつきもないことにホッとしているようだ。

椿の手首に痣がないのを確認し、何を隠そう俺がホッとしたのは言う間でもない。

「それに、生徒会室には全ての部室の鍵もある。入って調べようと思えば、いつでも入れる」

「簡単に言ってるけど、霞月。本気?」

「俺はヴァンパイアにされているんだよな。身の潔白を証明しなきゃだろ、なあ椿?」

薄茶色の瞳が椿をじっと見つめていた。

「ガンちゃん、薔薇事件捜査をやろう。生徒会で秘密裏に」
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