新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
俺も画面を覗きこむ。

「薔薇が植えてある場所の1部、変だな。此処、薔薇が植えてあるはずの場所に、何でラナンキュラスが映っているんだ?」

霞月に言われて目を凝らすと、はめ込まれたみたいにラナンキュラスが映っていた。

「妙だな」

霞月は温室の見取り図に、赤ペンで記しをつけた。

「ガンちゃん。椿に『辛い気持ちを溜めこむ前に吐き出せ、聞いてやる』と話した」

霞月が俺の顔を見て、改まって言った。

「椿が地味子と呼ばれているのは許せないから」

いつになく、険しい顔をした霞月。

その声にも力がこもっていた。

霞月が椿と紫陽花に熱湯をかけたあの日、霞月は椿とどんな話をどんな顔でしたのだろう。

振られた俺が今さら気にしても、仕方のないことだと解っていながら胸の奥がモヤモヤした。
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