冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
飛鳥馬様のお顔をこっそりと盗み見る。
そこには、相変わらず整いすぎたお顔があった。
浮世離れした輪郭に、スッと通った鼻筋。まつげは女子よりも長いんじゃないかと思うくらい綺麗で、瞳が伏せられた時により一層色気が増す。
切れ長の瞳は流れるように綺麗な二重で、何も映さない漆黒の瞳がその存在を主張していた。そして何より、人間のものとは思えないほどの、麗しき唇。
その位置も、その形も、その色さえ、完璧にできている。
男の人らしい眉毛は、そのお顔を完璧に仕上げるための最後の役割を担っていると思うほど、長く綺麗だった。
この世の中には、本当に言葉だけじゃ言い表せないくらい美しいお方がいるのだと、飛鳥馬様を見て実感させられた。
飛鳥馬様はわたしを抱えたまま黒塗りのベンツの後部座席に座った。
その際、ベンツの観音開き仕様になっているドアを開けてくれたのは、なぜか顔中痣だらけになっている真人と呼ばれるあの夜の従者だった。
あまりにも酷い有り様だったので、少し気になりはしたが、相手はわたしを殺そうと首にナイフを突きつけてきた危険人物だ。
心配なんてしてられない。