冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


飛鳥馬様のお膝の上に乗ったまま、身動きが取れない。



「……ねえ、あやちゃん。今日はおれの言うこと、何でも聞いてくれるんでしょ」

「……っ、??」



驚いたことは、2つ。

1つは、飛鳥馬様が本当にわたしのことを“あやちゃん”と呼ぶ気でいること。

そしてもう1つは、言うことを何でも聞くという約束なんてしたっけ、という疑問。


でも、約束してるしてないにしても、飛鳥馬様の言うことに否定なんて(はな)からできないんだ。

わたしには最初から、選択肢など与えられていない。



「は、い……」



だから、飛鳥馬様が望む1番の返しを、慎重にしなければならない。



「じゃあ、おれの膝の上に(またが)って」



………っ!?

ああ、もう、本当に叶わない。

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