冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「お前、……女なんか作る人間だったのか?」
「………、さあな」
俺から目を逸らし、苦虫を噛み潰したような顔をする飛鳥馬麗仁。
らしくねぇな。
女なんていうワードに、ここまでハッキリとした反応を見せるこいつは。
それよりも───。
こいつが喧嘩をふっかけて来ないのなら、俺はもうお前に用済みだ。
俺は飛鳥馬から視線を外し、すぐ真後ろにある彩夏の家の2階の窓を見上げた。
いつものことながら暗いな……。
カーテンを全て閉めきったその2階建ての家は、どこか異様の雰囲気を放っている。
──寂しい。切ない。悲しい。
そんな思いが、にじみ出ている気がした。
だけど、それは俺の勘違いだろう。
彩夏はいつだって笑顔で、暗い一面なんて何もない。