冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
俺に首根っこを掴み上げられても尚、余裕そうな表情で俺を見下ろして微笑を湛える飛鳥馬麗仁が、今何を考えているのかサッパリ分からない。
……もしかして、こいつは俺と彩夏のカンケイを前から知っていたとか。
俺の脳内に、とんでもなく恐ろしい仮説が浮かぶ。
「お前、もしかして───」
“俺と彩夏のカンケイを知った上で、わざと煽ってやがるのか?”
そう言葉を続けようとしたが、俺は日和った。
もし飛鳥馬麗仁が俺と彩夏のカンケイを知らなかった場合、その質問をすることによって自ら秘密を明かしてしまうことになる。
そうなったら、彩夏は飛鳥馬麗仁に人質として利用され、怖い目に遭ってしまうだろう。
……それだけは、絶対に避けたい。
今まで何のために彩夏とのカンケイを周囲に隠してきたと思っているんだ。