冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
僅かな間をおいて、俺を煽るようにそう言ってきた。
……ああ゛、最悪だ。
頭の中で何か大切なものがガラガラと崩れていく音を聞いた。
目の前が真っ暗になる。
“彩夏に裏切られた───”。
真っ黒で、ドロドロとした感情が俺の心を覆い尽くす。
「…っ、お前ッ゙、どうして彩夏と……ッ!!」
俺は沸々と湧き上がる怒りを抑えきれずに、飛鳥馬麗仁の首根っこを強く掴む。
……というか、こいつ相手に何も我慢することはないじゃないか。
「えー、なんで答えなきゃなんないの。プライベートにまで押し入るなんて、西ノ街の皇帝は礼儀も知らないのか」
……っ、本当に本当に、こいつは俺を煽るのが巧い!