惚れた弱み


『橋本ちゃんは?彼氏つくんないの?』


『彼氏…?』


『ほら、サッカー部にいるんでしょ?好きな人が。』


『好き…なんでしょうか。自分でもよく分からなくて。』


――分からない?好きって言いきれない程度にしか、惹かれてないってことか?


『分からないってどういうこと?ほら、好きだったらさ、2人で話したいなーとか、デートしたいなーとか、思うでしょ?そういうの、ないの?』


『2人で…話すのは楽しいですね。デート…は、考えたことなかったなあ。』


――デートしたいって思わないってことは、付き合いたいとは思ってないってことか…?


そう思った瞬間、思わず余裕を持って構えてしまった。


菜々に良い印象を持ってもらいたいがために、「悩みを聞いてアドバイスをくれる、優しい先輩」を、つい演じてしまっている自分がいた。

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