惚れた弱み
「…で、つまり橋本ちゃんがひろの彼女になった、ってわけだな。おめでとう。」
後日、大学入学前に夏樹と会った博孝は、高校近くのカフェで、菜々と付き合うことになったことを報告していた。
「夏樹のおかげだよ。ありがとう。」
「いや、俺は別に大したことしてねーし。」
そう言うと、コーヒーカップを持ち上げて少し飲んだ。
「あ、そうだ。俺、夏樹に謝らないといけないことがあったんだ。」
「え、なに?」
「ほら、インターハイ前にグラウンドで話した時。工藤ちゃんの胸を揉んだの聞いて、俺、公共の場でそんなこと、サイテーだって言っただろ?」
「あー…言ったかな?」
「覚えてないのかよ。」
博孝は夏樹の反応を見て笑った。そして。
「夏樹の気持ちが分かったから、前言撤回するよ。ごめんな?彼女が可愛すぎると、例え公共の場でも、急にスキンシップ取りたくなることがある、ってわかったから。」
「お前…公共の場で何したんだ?」
「それは…教えないけど、まああれだな。人もいなかったし、ぎりセーフだな。」
「いや、内容によってはアウトだぞ!?何したんだ?」
「それはまあ…。」
博孝はニヤケ顔で誤魔化し、夏樹そっちのけで、先日の菜々とのキスの思い出にしばらく浸ることにしたのだった。
fin.


