惚れた弱み
愛おしくて、思わず手を伸ばして顔に触れた。
少しびくっと反応した菜々は、緊張の面持ちで博孝を見つめてくる。
――…橋本ちゃん、無意識なんだろうけど、見つめてくる感じが煽ってるみたいだな…。
「…先輩?」
「ん?何?」
「好きです。」
――不意打ち過ぎだろ!!
心の中で悶絶する自分を抑えながら、博孝は「俺も。」と答える。
「…でも、それはもう聞いたなぁ。他のちょうだい。」
「え!?」
「え、他にないの?」
以前、やり取りした時のメッセージを思い出した。
あの頃は、欲しい言葉を引き出すために、必死だった。でも今は…
「矢嶋先輩、大好き!」
満面の笑顔で、自分の欲しい言葉をくれる。
幸せを噛みしめながら、博孝はもう一度、菜々の唇に自分の唇を重ねた。
何度も、何度も…。