嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「……そういえば。マイア嬢の趣味は?」
「しゅ、趣味ですか……えっと。お料理、でしょうか」

 何を言えばいいものか、マイアは悩んだ。
 趣味と呼べるものがない。
 趣味をやるだけの金を与えられていなかったから。

 ここは実家で手伝いをさせられていた料理と答える。
 作った料理を食べることは許されていなかったが。

「そうか。家庭的なのだな」
「すみません……」
「なぜ謝る。君は必要のないことでもあやまるきらいがあるな。
 どんな趣味だろうと素敵なものだ。誇っていい」

 ジョシュアはマイアのあらゆる部分を肯定してくれていた。
 まったく覚えのない感覚に、マイアは思わず酔いそうになる。

「ジョシュア様のお好きな食べ物って何ですか?
 嫌いなものとかはありますか?」
「そうだな……甘いものが、好きだ。こう言うと笑われることが多いが」
(か、かわいい……!)

 照れながら言うジョシュアを見て、マイアは悶絶してしまった。

「わかりました。それでは、今度フルーツの料理をお作りしますね」
「ありがとう。楽しみにしている」

 他愛のない雑談。
 されどマイアには何よりも楽しい時間だった。
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