明日に夢を見ようか。 不良になれなかった俺のギャラクシーノート
 「問題はどうやって高中の口を割らせるかってことだ。 あいつはそう簡単には喋らない男だからなあ。」 1台のセダンがロータリーを駆け抜けていった。
昨日、沢田が隠れていた辺りを覗いてみる。 煙草の吸殻が何本も投げ捨ててある。
「あんちきしょう、けっこうな煙草を吸いまくってたんだなあ。」 よく見ると日本ではあまり見られない煙草だ。
「何だろう?」 その一つを拾い上げてみる。
 根元まで吸い尽くしているように見えるのだが葉っぱのような物がこびり付いているのが見える。
「変だな、、、。 煙草に何か混ぜてるのか?」 不思議に思った彼はその一つをハンカチに包んでポケットに仕舞った。
 ブラブラと歩いていた彼は俺が入院している病院の辺りにまでやってきた。 「オー、結城じゃないか。 散歩中?」
「松尾こそ珍しいな。 どうしたんだ?」 「いやいや高中の一件がやっと動き出したもんでな、、、気分転換に買い物でもしようかと思って、、、。」
「そうか。 松尾は知らないかなあ?」 「何がだよ?」
「昨日、沢田と茜がグルになって岩谷さんたちを狙ってたってこと。」 「ほんとか?」
 「ああ。 大下駅前の屋台で飲んでたらさ、やつらが居たんだよ。」 「それでケガ人は出たのか?」
「動き出す前に潰したから何も無かった。」 「それは良かった。 今やつらに動かれると大変だからな。」
 「それでさっきも駅前の辺りを歩いてたんだ。 そしたらこんな物を見付けたんだけど、、、。」 結城はハンカチに包んだ吸殻を松尾に見せた。
「何だこれ?」 「沢田が隠れてた辺りにたくさん落ちてたんだ。」
「普通の煙草じゃないな。 どう見ても薬が入ってるだろう。」 「そう思う?」
「これを調べるのは警察さんの仕事だ。 俺の仕事じゃない。」 「分かった。 出してくるよ。」
 結城と別れた松尾は駅前通りを歩いている。 そしたら黒スーツの男が近付いてきた。
いつものことで松尾は何も感じない顔で歩いている。 擦れ違った瞬間、男が殴りかかってきた。
 「何をする気だ‼」 「お前に嗅ぎ回られちゃ何も出来ないんでね。 死んでもらうよ。」
男はポケットからナイフを取り出した。 「お前、沢田の紐付きだな?」
「それがどうした?」 「やめとけよ。 沢田は昨日逮捕されたんだ。 お前らだって捉まるのは時間の問題だろう。」
「うっせえ‼ 殺してやる‼」 男が飛び掛かってきた瞬間、誰かが叫ぶ声が聞こえた。
 「瑞樹。」 「危なかったな。 こいつは俺が引っ張ってくよ。」 見ると男は脇腹を押さえて呻いていた。
「どうしたんだ?」 歩いて行ったはずの結城も声を聴いたのか戻ってきた。
 「いやいや、沢田の紐付き男に殺されそうになったんだ。」 「松尾もスタンガンくらい持ったらどうだ?」
「考えてはいるけどそこまでは、、、。」 「ダメだよ。 大村さんの周りで高中たちが動いてるんだから。」
「それもそうだな。」 二人は改めて駅前を見渡した。
 すると猛スピードで走ってくるスカイラインを白バイが追い掛けているのが見えた。 「派手に追いかけっこをしてるなあ。」
「黒のスカイラインか。 この辺じゃ見たことが無いな。」 「そうか? ずいぶん前に見たような気が、、、。」
「しかしまあ真昼間に何をすっ飛ばしてるんだろう?」 「さあなあ。 最近は訳の分からんやつが増えたからなあ。」
「じゃあ俺は買い物に行くよ。 何か有ったら連絡してくれ。」 松尾はそう言うとモールのほうへ歩いて行った。

 古館はというと山岡という元警察官の男と食事しながら話し込んでいるところ。 その話題の中心は大村さんをどうするかってことだった。
「大村は執行猶予中なんだろう? 今なら動けないんだよな?」 「そうだ。 何を仕掛けても何を企んでもやつは動けない。」
「矢沢を嗾けるか?」 「嗾けてどうするんだ?」
「あいつの彼女を奪うんだよ。」 「待て。 あの女は高中の所に居るぞ。」
「高中? あのチンピラか。 あんなのはさっさと殺しちまえばいい。 そうすりゃこっちのもんだぜ。」 「どうやってやるんだ?」
「あいつだって女好きだ。 風俗の女を当てがってやればのこのこと出てきやがる。 そこを狙うんだよ。」 古館はそこに醜悪な臭いを感じた。
 「じゃあ2,3日中に実行しよう。」 そう言って別れたまではいいが古館はどうも引っ掛かることが有って、、、。
山岡は言うことはでかいが実際には動かない男である。 今回もそれで逃げ回るのでは?
 大村さんはというと松尾が狙われたのも知らずに部屋でゴロゴロしていた。 何せ動けないんだからしょうがない。
結城は煙草の吸殻を持って警察を訪ねていた。 「おー、結城じゃないか。 どうしたんだ?」
少年課でお世話になった刑事の高島健作である。 「いやいや、昨日はまたまたやられそうになって、、、。」
「高中か?」 「あいつのだちですよ。」
「お前たちも大変だねえ。 んで、今日は何の用だ?」 「昨日、沢田が隠れてた辺りにこんな煙草が落ちてたんで持ってきたんですよ。」
 高島は結城が取り出した吸殻を見詰めた。 「これは大麻だな。」
「大麻?」 「そうだ。 詳しく調べてみるよ。 ありがとう。」
 高島が奥へ引っ込んだのを見て結城も警察署を出てきた。 「事件ばかりだなあ。 落ち着いてくれないかな。」
ブラブラと歩いていると黒瀬が荷物を抱えて歩いてきた。 「やあ、親衛隊長さん。 元気?」
「取り敢えずね。」 「ダメですよ。 明るくしてなきゃ。」
「分かってんだけどさあ、、、。」 「大村さんなら大丈夫。 家でゴロゴロしてるから。」
「そっか。 猫みたいだなあ。」 結城はやっと笑った気がする。
 その足で大村さんの家に行ってみた。 「結城か。 何か用か?」
「いやいや、散歩ついでに寄ったまでだよ。 黒瀬にも会ったし、、、。」 「そっか。 あいつは仕事中だからな。」
「昨日のさあ、沢田が居た辺りを見てきたんだ。」 「どうだった?」
「変な吸い殻がたくさん落ちてたから警察に出してきた。」 「変な吸い殻?」
「高島さんの話じゃあ大麻だろうってことだから調べてもらってる。」 「そうか。 沢田は大麻にまで手を出したのか。」
「しかも煙草は日本の物じゃない。」 「何だって?」
「海外製の煙草なんだ。」 「海外製か。 不思議だなあ。」
「何で?」 「やつが海外に行ったって話は聞いたことが無いんだよ。」
「周りに居るんじゃないのか?」 「考えにくいな。 高中とか大島なら有り得るかもだけど。」
「高中友繋がってたんじゃないのか?」 「あいつらの付き合いはまだ浅いはずだ。 高中がそう簡単に物をやるとは思えない。」
「そうか。 じゃあ誰が沢田に外国製の煙草を?」 「それが解けたら俺だって苦しまねえよ。」
「それもそうだな。 じゃあ行くわ。」 結城は部屋を出た。
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