探偵は夢中で捜査中
侑芽、レム、警部の3人は一旦店の外に出てテラス席に座った。
容疑者達は店内で待機してもらい、警官が見張っている。

侑芽はお手拭きで手を拭いてから、先ほど注文したアイスティーを一口飲んだ。

「はぁ〜美味しい!ティーパックも良いけど、茶葉から入れた紅茶は贅沢だなぁ」

「侑芽ちゃん紅茶好きですもんね。僕も入れてもらったホットミルク頂きます」

レムは相変わらずニコニコしている。ご主人様が楽しそうならこの男は満足なのである。
そんな2人を尻目に、警部はお冷の入ったグラスを一気に煽る。
お冷グラスの氷がカランと音を鳴らしたと同時に、話を切り出した。

「で、越智先生。どうでしたか?犯人の手がかりは何か掴めましたか?」

聞いていた感じでは、侑芽は事件に関係がありそうな、ないようなことを聞いていた気がする。
ところが、侑芽は確信めいた瞳を光らせた。

「はい。犯人の目星はつきました」

「えぇ!?ほんとですか!?」

警部は思わず立ち上がった。

「で、では宝石の場所も・・・?」

「見当はついていますが、確信はまだ。そこで警部に確認したいことがあります」

「な、なんでしょう?」

警部はネクタイを締め直して、再び腰を下ろした。

「私がここに来た時、間倉さんの注文したアイスティーのグラスがなかったんです。片付けちゃったんですか?」

「あぁ、それはですね。身体検査の時にちょっとしたハプニングがありまして・・・」

それは容疑者達の持ち物と身体の検査をしていた時。
男性は警部、女性は婦人警官が担当し、根牟田→間倉→別戸の順で検査を行った。
間倉が席に戻り、別戸が化粧室に向かった時に、カバンが間倉のアイスティーのグラスにぶつかってしまい、床へ盛大にぶちまけてしまったのだ。

「グラスが割れた上に、フローリングが水浸しになりましてね。
別戸さんが謝りながら掃除をしようとしたんですが、間倉さんと根牟田さんが『自分たちが片付けるから大丈夫』とおっしゃったので、私を含めた3人で床を掃除したんです」

「その時、誰がどこを掃除したか覚えていますか?」

「え?ええっと・・・、確か間倉さんが『自分がグラスの破片を集める』と言って根牟田さんからホウキとチリトリを受け取って、根牟田さんが『床を拭くのでモップを持ってくる』と言ってバックヤードに入って、私がカウンターの上を布巾で拭きました。後は各々、根牟田さんがモップと一緒に持ってきた雑巾で床を拭いていましたね。その間に別戸さんには検査を受けてもらっていたんです」

この話を聞き、侑芽はほくそ笑む。自分の考えは確信めいてきた。しかしまだ何かしっくりこない。

「確かにこの方法なら宝石を隠せるかもだけど・・・。でもなぁ〜すぐバレそうな隠し場所なんだよね・・・何かトリックがあるのかな」

侑芽はブツブツ言いながら、思考の海に沈む。

この世界では、侑芽の知らないことは出てこない。
覚えているかどうかは別として、現実世界で夢が1度は見聞きしたことで形成されているので、今回トリックがあるとすれば、必ず今までの生活にヒントがあるはずなのだ。

「こうなったら、もう一度現場を見て捜査をしよう!」

侑芽が椅子から立ち上がり、入り口に向かおうと歩き出す。
しかし、その横で空を見上げていたレムに袖を引かれた。

「ん?どうしたのレム?」

「侑芽ちゃん、残念ながら今日の所はタイムオーバーのようです」

侑芽はレムと同じように空を見上げる。
晴わたる青空に、少しずつ霧のようなモヤがかかり始める。
そしてそれはあっという間に侑芽の周りを覆い、次第に意識が遠のいていった。
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