極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
聞き直そうとドアに手をかけた瞬間、車が発進してしまった。あっという間に病院が遠ざかっていく。

今、『翔琉』と呼んだ?

ううん、そんなはずはない。ふたりが名前で呼び合うほど親しくなるとは思えない。きっと聞き間違いだ。

帰ったら一応翔琉さんに聞いてみよう、そんなことを考えながらタクシーに乗っていると、携帯端末が震え出した。

発信者は月乃だ。びくりとして端末を持つ手に力がこもる。

「……すみません、運転手さん。電話をしてもかまいませんか?」

「かまいませんよー」

私は端末を耳に当てる。「はい」と応答すると、周囲の雑音が酷かったのか『星奈? 今どこー?』と不機嫌な声を出されてしまった。

「タクシーの中だよ。病院帰り」

『そっか。体調は? 変わりなし?』

「うん……ちょっと悪いかな」

『へえ』

月乃の声が跳ね上がる。まるで私の不調を楽しんでいるかのようで、いい気がしない。

『ねえ星奈、実家に帰ってきたら? 家の方が気が休まるでしょ? 翔琉さんにも迷惑かけないで済むし』

「それは……」

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