極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
製薬会社の広報。活動の多くは企業や一般人向けなのだが、稀に病院の患者さんと接したりもする。

彼ら、とくに長期入院をしていたり、重い病を抱えていたりする患者さんは、黒い服の人間を見ると「お迎えが来た」と思うらしく、嫌な顔をされてしまう。

「病院を黒ずくめで歩いてたら、死神みたいって思うわよね……」

自分もそうだったからよくわかる。

だから私は、なるべく黒を着ないようにしている。フォーマルが求められるときも、できる限りネイビーやグレーで回避。

黒はそれこそ弔事だけでいい。

「これでよし」

メイクを整え、髪をハーフアップにして、クローゼットの全身鏡で身だしなみをチェック。

ちなみにコンプレックスは細い体と地味な顔。リクルートスーツを着てお団子頭で働いていたときは、入社から一年以上経っても新入社員みたいと言われて困ったっけ。

今は明るめのメイクと、スーツをアレンジしたオフィスカジュアルコーデで多少はあか抜けた。二十五歳、年相応に見えていると思う。

鏡の前で笑顔の練習をしたあと、朝の薬を飲む。今日も一日元気で過ごせますようにと祈りを込めながら。

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