極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
そうこうしている間に、時刻はすでに七時半。急いで家を出る支度をする。

会社までは徒歩二十分。就職時、できるだけ通勤が楽な場所を探して家を借りた。

都心の家賃相場は高く、私の初任給で借りられるような部屋が見つからなくて苦労したっけ。

ようやく見つけたのは、ワンルームの古めかしいマンション。でも内装はリフォーム済みで綺麗だし、バストイレも別で充分満足している。

なにより、初めてのひとり暮らしにわくわくしっぱなしだった。

家族と離れて暮らすのは、最初は不安もあったけれど、自立してもう三年が経ち、慣れたものだ。

しかし、母はまだ心配らしく、毎週のように「元気にやってる?」と不安な声で電話をくれる。なだめるのが大変だ。

「これまでお母さんにはたくさん迷惑をかけてきちゃったものね……」

体が弱いせいもあり、幼い頃から心配をかけさせっぱなしだった。

本当は家を出て就職なんてさせたくなかったのかもしれない。

でも、就職が決まって一番喜んでくれたのも母だった。今も気がかりに違いないけれど、応援は伝わってくる。

「ちゃんと応えなくちゃ」

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