極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
考えが及ばなかった部分もあり、面接官から辛辣な意見も飛び出したけれど、意欲は買ってもらえたようで、後日内定の通知が来た。

「祇堂さん、あの場にいらっしゃったんですね……」

「歳がバレないように軽く変装はしていたよ。大きな眼鏡をかけたりしてね。役員や管理職の中に俺がいたんじゃ浮くから」

彼が茶目っけたっぷりに微笑む。

そういえば面接官の中に、妙に顔が見えづらい人事担当者がいたっけ、と頬をかく。

「俺は君の夢を叶える手助けをしてやれると思う」

胸の奥から熱いものが込み上げてくる。

これはチャンスなのかもしれない。

オーファンドラックの開発は、儲けとは程遠い、社会貢献的な意味合いが強い。

万一景気が傾けば、真っ先に切られてしまう分野だ。

『難病で苦しむ患者を救いたい』――その言葉の裏には、オーファンドラックの開発を進めたい、守っていきたいという意思がある。

……私に効く薬も開発されるかもしれない。

身の内に巣食う病魔は、今は薬で大人しくしてくれているけれど、いつまた暴れ出して私の命を食い潰すかわからない。

私だけじゃない、難病を抱えるみんなが、この恐怖と戦っている。

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