極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
四十度の熱を出し、何日か目を覚まさなかったとき。一年間ずっと微熱が収まらず、入院し続けたとき。「こんな体に産んでごめんね」と泣きながら母に謝られた。

「ごめんなさい……」

その言葉は彼にかけたものか、あるいは母にか。じんわりと視界が滲んで彼の顔が見えなくなる。

彼の親指が私の目の下をそっとなぞり、涙を拭った。

「無事でよかった」

その手が頬に添えられ、端正な、少し紅潮した彼の顔が近づいてくる。

綺麗な肌、そうぼんやりと見蕩れている間に、唇が重なった。温もりが唇の隙間から流れ込んできて、ようやくキスされたのだと気づく。

想像していた以上にとても柔らかい。真ん中に、くすぐるように触れているのは彼の舌? ゆっくりと緩慢に私の唇を撫でて、そっと離れていった。

閉じられていた彼の瞳がゆっくりと開く。開いたままだった私と目があって、ハッとした。

「ご、ごめんなさい、私、初めてで、どうしたらよかったのか……」

目を閉じて応えるのがマナーだった? あわあわしていると、彼は私の顔に張り付いていた髪をそっと耳にかけた。

「そのままで。ずっと俺のそばにいて」

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