極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
声をかけられても運ばれても起きなかったくらいだから、かなり深く寝入っていたのは確かだ。……やっぱり気絶かもしれない。

「ご心配おかけして申し訳ありませんでした……」

びしょ濡れになってここまで運んでくれた彼には、もう平謝りするしかない。

縮こまって頭を下げると、彼の手が背中に回り込んできて、体を引き寄せられた。

「し、祇堂さん!?」

まだ髪も体もびしょびしょで水が滴っているというのに、自分が濡れるのもいとわず私を胸もとに押し込み、ぎゅっと強く抱きしめる。彼のシャツに灰色のシミが広がっていった。

透けた肌色に頬を押しつけ、彼の鼓動の音を聞く。

ドクドクドクと、速いリズムを刻んでいた。

「……心配した。もう目を覚まさないかと」

ずきんと胸が痛んだのは、同じような台詞を幼い頃、何度か家族にかけられたからだ。

私の体調を知っていれば、『もう目を覚まさない』は決して笑いごとではない。

だが普通の人はこの程度で亡くなったりしないだろう。「大袈裟ですよ」と微笑んで見せるも、彼は目を充血させていた。

そこまで心配してくれたの?

そんな目をした母親も何度か見たことがある。

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