絶交ゲーム
バケツを掃除道具入れに戻してすぐに3階のA組へと駆け上がる。
結は呆然としてしまってしばらくその場から動けないはずだ。

A組に近づいてから、私達は歩調を緩めた。
そしていつもどおり会話をしながら教室へ入る。
心臓は早鐘を打っていたけれど、歌子とふたりだからどうにか顔に出さずに済んだ。


「おはよー」


教室にいるクラスメートたちに声をかけて自分の席につく。
大丈夫。
別に怪しまれたりはしていないはずだ。

弥生は他の友人らと会話していてなにも気がついていない。
結が自分の名前で呼び出されたあげく、2階から水をかけられたなんて微塵にも思っていないはずだ。


「うまく行ったかな」


詩子が小声で聞いてきたので私も小さく頷いた。
きっとうまく行った。

これでふたりの関係はこじれるはずだ。
いくらちゃんと会話をしていたって、相手の言葉が信用できなくなるときはある。

今が、そのチャンスだった。
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