絶交ゲーム
私は何食わぬ顔で商品を眺めていく。
気に入ったものがあればついでに購入するつもりだった。

店員たちは私たちの方へ視線を向けながらも近づいてはこない。
きっと、なにも買うことはないと思っているんだろう。
私は詩子と2人でひとしきり店内を見て回ったあと、近くにいた女性店員へ声をかけた。


「すみませn。ショーウィンドーの商品が欲しいんですけど」


その言葉に女性店員は一瞬とまどった表情になり、そしてすぐに微笑んで「お持ちしますね」と答えた。
まさか私達が買い物をするとは思っていなかったみたいだ。

その慌てっぷりが面白い。
やがて持ってこられた実物を見て、私たちは迷うことなくバッグを購入した。

合計で30万円以上する商品を、胸を張って購入する。
この電子マネーは私と詩子が一生懸命考えて体も張って手に入れたお金だ。

やましいことなんてなにもない。
ブランドバッグの入ったショップ袋を手に店を出た時、私達の胸には爽快感が溢れていたのだった。
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