絶交ゲーム
「もちろん。私こっちのバッグが気に入っちゃった」


ショーウィンドーに飾られているチェーンバッグを見て私は言う。
それは大人の女性が持っていそうな小ぶりでおしゃれなバッグだ。
とても今の私には似合わないだろうけれど、お金なら十分に足りる。


「ついでに買っちゃおうかな」


私はそう言い、詩子と共にお店に足を踏み入れたのだった。
そのお店の雰囲気は今まで入ったことのない雰囲気のものだった。

分厚い絨毯が引かれていて足元はふわふわしているし、店内に入るとすぐに「いらっしゃいませ」と複数の店員たちが丁寧に頭を下げてきた。

店員たちはみんなここのブランドで作られた焦げ茶色の制服を身に着けていて、微笑を浮かべている。
私の後ろで詩子が腕を引っ張ってきた。


「やっぱり私達場違いじゃないかな?」


確かに、制服姿で気楽に入るお店じゃない。
だけどそのくらいはわかっていたはずだ。
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